難聴を放置すると

難聴を抱えながら生活することは、聴力だけにとどまらずさまざまなマイナスの影響を与える可能性があります。

  • 明確に考える能力が低下する可能性
  • 認知症のリスクが高まる可能性
  • 記憶力が損なわれる可能性
  • 会話から取り残されているような疎外感
  • 社会生活に影響が出る可能性
  • 日常生活に不安を感じる可能性
  • 精神的負担が増大する可能性

難聴の7つの影響

1.明確に考える能力が
低下する可能性

十分な音の情報がなく周囲で何が起こっているのか把握しにくい場合、感覚の鋭敏さや対応速度が低下する可能性があります。一部の研究者は、脳への音の刺激の減少が、音を処理して認識する脳の能力を低下させてしまう可能性があると考えています。

2.認知症のリスクが
高まる可能性

2020年にランセット委員会が発表した報告書は、難聴が認知症に対する重大な危険因子であることを示唆しています。実際、中程度の聴覚障害があると、認知症のリスクが 3倍増加する可能性があります¹。また、精神的な刺激の低下や孤立感をも引き起こす可能性があります。難聴に適切に対処することは、 聴こえを通して脳を積極的に日常生活に関与させ、認知機能の低下を防ぐのに役立つと考えられています。

*ランセット委員会|Volume396、ISSUE10248、P413-446、2020年8月8日-認知症の予防、介入、およびケア:ランセット委員会の2020年報告書。

3.記憶力が損なわれる
可能性

聴き取りにくいと何を言っているのかを理解したり、今していた会話の内容でさえ記憶することが難しくなります。 これは、聴くために認知リソースが通常以上に必要になるため、脳が利用できる記憶と理解のためのリソースが減少してしまうからだと考えられています。

4.会話から取り残されて
いるように感じる

聴力が低下すると、日常会話を理解することが困難になる場合があります。会話を理解するために、相手に何度も繰り返し話してもらったり、近くに座って会話の相手の唇を読んだり、表情を観察したりする必要があるかもしれません。 うなずいて、言われている内容を理解したふりをすることもあるでしょう。このような状態は疎外感や孤独感を生み出し、生活のクオリティを著しく損ないます。

5.社会生活に影響が
出る可能性

聴覚に障害があると、友人と連絡を取り合うのが難しくなるかもしれません。パーティーやイベントなど大勢の人が集まる場など、特定の環境では顕著になる場合があります。その結果、社交行事から身を引いたり、誘いを断ったりすることになり、やがて社会参加の機会から遠ざかってしまう可能性があります。

6.不安を感じるかも
しれません

聴力が低下すると、周囲の音を理解して音と自分の位置を特定することが難しくなることがあります。そうなると、日常生活における外出などに対してさらに不安を感じるようになるかもしれません。

7.精神的負担が増大する
可能性

会話が聴き取りにくいと、コミュニケーションに疲れを感じることが増えてきます。これは、会話の内容を理解するために認知能力のエネルギーをより多く消費してしまうためです。社交イベント、レストラン、または人混みの中では、さらに集中力を必要とするため、特に負担となる場合があります。

聴力を改善するための4つのステップ

脳に十分な音の情報が届かないと

難聴になると、耳から脳への音情報が十分伝わらず、伝わる音情報の質も低下します。
そのために、脳が周囲にある音の情景の全体像を捉えることが難しく、必要な音に集中することも困難になります。

聴覚の問題が脳の問題に繋がる

音の情景全体が届かないことによって脳の問題につながる可能性があります。難聴の状態では脳が音を理解しようと、脳の他の分野が補うために活発に働くことになります。これにより、記憶をするために使用されるべき脳のリソースが足りなくなる可能性もあるのです。

脳の問題が日常生活に影響する

難聴を対処せず放置することにより、聴こえ単独の問題にとどまらず、脳へも悪影響を及ぼします。脳に届く音が制限される状況では、会話についていけない、聴くための労力の増大、精神的な負担が増すなど、日常生活への深刻な影響を招くことになります。

難聴で大切な人生の時間を損なっているかもしれません

補聴器を装用した人は、QOL(生活の質)の向上を実感されているというデータがあります。
難聴は、聞き返したりする精神的なストレス、会話を理解しようとする脳の負担などにより、大切な人生の時間を損なっていると言えるかも しれません。一般的に加齢による難聴は、徐々に聞こえ難くなるため、気付きにくく、「まだ大丈夫」と考えて補聴器の装用が遅れがちです。少しでも聞きづらさを感じた時、それが補聴器を使い始めるタイミングです。

一般社団法人日本補聴器工業会JapanTrak 2022調査報告書より

医師や聴覚の専門家から聴こえについての
アドバイスを受けてください

医師による的確な診断

補聴器を選ぶ前に、耳鼻咽喉科医の 診断を受けることをおすすめします。 医師の診察を受けずに補聴器を購入した方の中には、早急に処置が必要であったり、 補聴器の必要がなく対処できる場合もあります。

補聴器販売店による測定・アドバイス

補聴器を調整するために必要なデータを取ります。特に、言葉の聞き取りの測定は重要です。適切な調整とケア、コンサルティングを受けることのできる専門の 知識・技能を持った聴覚ケアの専門家がいる販売店をおすすめします。

情報源:1.ランセット委員会|Volume396、ISSUE10248、P413-446、2020年8月8日-認知症の予防、介入、およびケア:ランセット委員会の2020年報告書。